やった日 06.5/3
絶頂

車輪の国、向日葵の少女



事前情報と購入動機
 雑誌などでの紹介で興味を引かれる内容だったものの、放置。
しばらくして評判が良い事を知り買ったものの、放置。
これこそまさに真の放置国家ってね、HAHAHA



ストーリー概要
 教育刑を取り入れた近代国家にて、

【恋愛禁止】
【1日が12時間】
【親の命令を絶対聞かなくてはならない】

 などの義務を負う少女達と、
義務を負う人々を監視・更正する役割を持った『特別高等人』を目指す主人公が出会い、
なんか色々あって、社会の是非を問うって感じ。みたいな。



シナリオの感想とか
 ヤラれました。

 久々に、心から「ヤラれた!」と叫ぶ出来。ヤバ面白かったです。


 ひとまずテキスト面から。
テキスト面ではおおむね好評でした。(俺に)
多少のオマージュを用いながらも、全体的にハイセンス。
妙に受け返しのキレが良いギャグは大いに笑えましたです。

 但し、風景とか状況描写での地の文では少々気になる点も。
何だか無理に比喩を用いているような、
過剰に修飾した描写はあまり上手いとは言えない気もします。

 また、これはシナリオ面にも少し関わってくるのですが、
他人の内面を病的なまでに深読みする登場人物達の傾向は
人によってはかなり好き嫌いが出るかもしれません。

 とくに仕事柄か心理分析が大好きな主人公の言動の数々は
嫌悪感を示す人も多いのでは無いかと思います。

 このあたり、某・鍵作品に出てくるヒロイン達とはまた別の方向性で、
全員恐ろしいまでに病んでるぜ…!とか思っちゃいましたが、
物語後半からはそのような分析も少なくなってくると思いますので御安心。
多少気になる要素もありましたがテキストは良好。


 で、シナリオ面。
序盤から伏線を張りまくり、それでいて見事なまでに予想を覆す構成は圧巻の一言。
ヤラれた度で言えば、個人的にはever17以来だったかもしれません。
ホント、久々に完全なミスリードを貰いました。おしっこジャジャ漏れの出来。

 人によっては「全然そんなことなかったよ?」と言う聡明な方も居ると思うので、
シナリオに関しての謎解き・トラップという面ではそこまでオススメは出来ませんが、
そういった要素は予想してなかっただけに衝撃も大きかったです。

 やはりストーリー概要を読んだ時点では、いかにも社会性のありそうなテーマですので、
まさかこんな演出があるなんて夢にも思わなかった、みたいな。


 そのテーマ性ですが、こればっかりは読んで貰わないと説明不能です。

 近代社会での刑法の在り方と死刑制度の是非、時間とマネー、親と子、恋愛。
本作は様々なテーマを提示してきますが、どう思うかは読者の勝手。
作品上でそれらについての解答を示したら最早思想書の域、
エロゲとか文学どころかエンターテイメントから外れますし、
作者が「テーマ性なんて無いよ」とでも言えばそれまでです。

 そんなテーマについて、読者がどう感じ、どう思うのか。
もちろん、設定などで苦しい所もあるでしょうし、
そこまで感じ取ってゲームする必要も無いと思います。

 ですが、やたらと重い内容を受け入れ自分なりの解答を出せた時、
出そうとした時、本作はプレイヤーにとって至高の作品となり得るでしょう。

 なんだかんだで、『テーマを感じさせる作品』というだけでも
シナリオ面では良く出来ているのではないでしょうか。
「全然感じなかったよ」って人も居るでしょうし、「設定があり得ない」、
「内容が幼稚」なんて人も居るかもしれません。
が、私個人としてはグッドジョブの一言。


 『群青の空を越えて』でも似たような事を書きましたが、内容についての是非は別として、
こんなに尖った作品が出るのは私的にはそれだけで喜ばしい事です。

 別にエロゲを神聖視しているワケでもありませんが、
こういった作品も許容できる土壌はやはり面白いですね。
これからも各社頑張ってもらいたい所存。


 微妙に話が逸れましたが、私なりのオススメ層を提示してまとめ。


・エロゲに何かを求めてる方


 今回はこの一点で。
車輪はいいですよー、何かがありますよー。きっと。たぶん。
ストーリーの概要を読んで何かが来そうな方に超絶オススメです。たぶん。



その他・システムとか 
 普通の選択肢形式です。

 名作は音楽も良く出来ている、という法則(?)に従って、本作の音楽も良い感じ。
あくまでも個人の嗜好の範疇ですが、
シナリオテーマの一つでもありそうな『人の強さ』を感じさせる荘厳な音楽は、
「泣き」、「燃え」などといった他のエロゲとは方向性が違っていて個人的には気に入りました。


 システム面は普通の領域。
特に不便も感じる事なく、安定していて良い感じ。
スキップがかなり早くて良かったです。

 共通ルートが多すぎ、というか見ようによってはぶっちゃけ1ルートしか無いのはマイナス。
各ヒロインの個別エンドはありますが、そこに至るまでの経緯は全部同じです。
1発勝負の物語。

 1発勝負って事で思い出したんですが、二度と書けなさそうなシナリオですよね。
実際、ここまで練った作品を複数出しているライターってあんまり居なかったりするんですよね。
とりあえず、シナリオライターの次作品にも激しく期待です。



評価 
総合
95
シナリオ
100
音楽
80
萌え 60
泣き
90
エロ 1

最萌えキャラ:しまぱん

 


戻る